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2020-01-19

7. デリバリモーニング

 

デリバリモーニング  詞・曲 わららべ尚道

トカプノチウ ニシシリピリカ
トカプノチウ デリバリモーニング
トカプノチウ ニシシリピリカ
トカプノチウ デリバリモーニング
ウーウウウ ウウウ ウウウウー

きみが届けた 朝の光が
ほどけていくよ ぼくの中で
トカプノチウ ニシシリピリカ
トカプノチウ デリバリモーニング
ウーウウウ ウウウ ウウウウー

早起きの雀たちが
ひとつひとつ 時を紡いでく
海風が おはようと 屋並みをなでてく
通りから目覚めてく
光のお帽子
窓からかぶせて
たたんでおくよ 夢の続きは
聞こえて来るよ
空と朝のハーモニー

トカプノチウ ニシシリピリカ
トカプノチウ デリバリモーニング
トカプノチウ ニシシリピリカ
トカプノチウ デリバリモーニング
ウーウウウ ウウウ ウウウウー

きみが届けた 朝の希望が
輝っているよ 風の中で

トカプノチウ ニシシリピリカ
トカプノチウ デリバリモーニング
ウーウウウ ウウウ ウウウウー

早起きの蕾たちが
ひとつひとつ 光をほどいてく
海風が おはようと 屋並みをなでてく
この町も 目覚めてく
光のお帽子
窓から かぶせて
開いてみるよ 今日のページを
聞こえて来るよ
空と朝のハーモニー

トカプノチウ ニシシリピリカ
トカプノチウ デリバリモーニング
トカプノチウ ニシシリピリカ
トカプノチウ デリバリモーニング
ウーウウウ ウウウ ウウウウー

 

 

歌の冒頭に出てくることば「トカプ ノチウ ニシ シリビリカ トカプ ノチウ デリバリ モーニング」のうち、デリバリモーニングは英語で、「届けられた朝」という意味で使われています。
それ以外のことばはアイヌ語です。
それぞれのことばの意味は以下のようになります。

●歌詞の中のアイヌ語の意味
トカプ=太陽 ノチウ=星 ニシ=空
シリピリカ=天気が良くなる

なぜアイヌ語を用いたのかについて簡単に説明しましょう。
歌詞の最初に「きみが届けた 朝の光が」という文句が出てきます。このきみとはだれのことでしょうか。それは特定の個人や集団を指しているわけではなく、私たちのいのちや生活をはぐくんでくれている自然の力のようなものを差しています。と、気付いたのは歌詞を書きあげた後のことですが、自己の自由意志に基づいてこの世界を管理し 支配し、変革するというスタンスは近代の人間観ですが、それは近代という短い時代につくられた特殊な世界観ではないか、と思うことがあります。

土地や資産を所有しているかのように感じますが、よく見れば単にある期間に借りているだけのことではないのか、こういう脱近代的な世界観について気づかせてくれた著作がありました。
それは文化人類学者、カルロス・カスタネダによる、メキシコのネイティブアメリカンの呪術師ドンファンとの対話シリーズでした。
もう大分昔読んだ本なので細かいことは忘れてしまいましたが、この歌の世界観はどこかネイティブアメリカンの世界観につながっているのではと気付いたのでした。

ネイティブアメリカンの世界観といえば、 秋川雅史の歌唱によって広く知られることになった「 千の風になって」という歌も、その歌詞の原作は、ネイティブアメリカンの人たちの伝承敵な詩によるものだと聞いたことがあります。
あの歌の歌詞を思い浮かべてもらえれば、なんとなくイメージがわいてくるのではないでしょうか。

ならば、歌の冒頭になにか彼らのことばを置いてみたいと思いましたが、ネイティブアメリカンのことばについては知るすべもなく、どうしたものかと考えていたときに、「そうだ、日本にもネイティブな人たちがいたではないか」と思ったのでした。

彼らアイヌの人たちの世界観も、ネイティブアメリカンの人たちのものと共通するものを持っているように感じられます。そこで今回はアイヌの人のことばを使わせてもらうことにしたのでした。

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