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2022-07-28

8.『霧が晴れたら』歌詞と解説

 

「霧が晴れたら」

あぁ蝉時雨が 滝降る音に重なって
山をつつむよ 蒼い空気 引き留めて

霧が晴れたら 町には行くよ
足を見つけて 町には行くよ

昨日までの夢を コトコトあたためてさ
目隠しおたまで 灰汁をすくいとってさ
そろそろいい加減に なったと思ってたら
とんだおじゃま虫が 飛び込んできたりして
あぁやり直しさ

霧が晴れたら 町には行くよ
ひと山当てたら 町には行くよ

田舎の駅前に オフィスビルを建ててさ
炭焼き小屋で 好きなだけ夢を焼いてさ
金満御殿の 殿様気取りの
川向こうのやつらを 見下してやるさ

あぁ蝉時雨が 滝降る音に溶け込んで
沢を登れば 炎天川にきらめいて

霧が晴れたら 町には行くよ
愛が見えたら 町には行くよ

欲しい物など何もないと 言ってみたいけれど
やるべきことなど何もないと 言っておくれよ
ブリキ屋根に当たる 天気雨の音に
こころを留めて うっとりしてるうちに
今日が終わるよ

霧が晴れたら 町には行くよ
ひと山当てたら 町には行くよ
愛が見えたら 町には行くよ
霧が晴れたら…

 

この歌を作った時、頭の片隅にあったのは「ゴドーを待ちながら」(著者 サミュエル・ベケット 1952年発行)という戯曲を読んだときの印象でした。
具体的なストーリーはほとんど忘れていましたが、二人の男がまだ会ったこともないゴドーという人物が来るのを延々と待ち続ける話でした。
人は幸福になるための条件を数えています。
あれがああなったら良いのに、お金が入ったら、ひとかどの人物になれたら、あるいはダイエットが成功したら、などなど、幸福になるための条件が訪れるのを待ち続けます。
「霧が晴れたら 町には行くよ ひと山当てたら 町には行くよ 愛が見えたら 町には行くよ」
裏を返せば、それらの条件が満たされなければ町には行かないということでもあるのです。
ああ、それなら町に行かずとも、人は幸福になる道はないのでしょうか。

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