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2022-07-10

今月の俳句「六月」2022

カモの絵

菜園の バケツを沈め 夏の川

清水川の遊歩道を歩いていた時 対岸でだれかがロープにつないだバケツを川に下ろしていた。
どうやら バケツで川の水を掬い取ろうとしているようだった。
この川の両岸は町が畑を日曜菜園として貸し出しているのだ。
菜園と言っても 水道があるわけではないので畑に水をやるにはそれぞれ工夫が必要となるのだ。

 

青嵐あおあらし 今日は ヨシキリ おとなしく

風がさわさわと河原の芒や葦を揺らしていた。
風が強い性か いつもなら 番長のように意気盛んに鳴いている ヨシキリが今日は 珍しく おとなしかった。
青嵐とは青葉の頃に吹く やや強い南風のこと。
ヨシキリ、ギョウギョウシ ヨシスズメとも呼ばれる。大ヨシキリと小ヨシキリとがある。
大ヨシキリは雀よりも少し大きく 背面はオリーブ色を帯びた淡褐色をしていて、五月の初めに中国南部から飛来し 沼沢 河畔の葦の半もするところに巣を作る。
ギョギョシギョギョシと鳴くのでギョウギョウシとか芦原雀とも呼ばれる。
小ヨシキリは芦原の他に乾燥した草原にも見られる。

 

南風みなみ吹く 海女の町の 写真展

風は地方によって様々な呼び名が付いている。南風と書いて ミナミと呼ぶこともあり、また西日本では ハエなどと呼ばれたりする。
昭和のころ 御宿町は海女の町であった。駅に置かれた海女の像がそれを物語っている。
今ではもう海女の姿を見ることは珍しい。三十年ほど前に 海女をしている女性が私の所に治療に来たことがあった。彼女はもう七十歳近く海女としては最後の世代ではなかったかと思う。
体格の良い人で「足ひれを付けると水の中で推進力が違うんですよ。」と言っていたのを憶えている。
戦後しばらくして 海女たちが銀座に上京して 御宿町の美しい浜辺に 海水浴に来てくださいと行く人にパンフを配ってアピールしたことがあった。
それがきっかけとなり御宿町は海女と海水浴の町となったのだった。

路地の奥 新居の傍に 泉在り

コロナの期間に 地方移住が進んだという話があり、いや そうでもないという話もあり どうなんだろうと思っていたが、少し前に 御宿町に引っ越してきたという人から話を聞く機会があった。
彼女の話では地方移住の需要は増加しているらしく 適当な住まいを見つけるのに苦労したという。
結局 路地の行き止まりにあるあそこのマンションに部屋を見つけたのだという。
あああそこのマンションといえば 裏の林には泉が湧いていて 夏にも涼しい風が流れてくるという話を以前に聞いたことを思い出して、案外彼女はいい所を見つけたのではと思った。

 

軽鴨カルガモさん そこは排水溝ですが

先日 茂原に住んでいる 弟が来て 話をした。
家のすぐ脇に幅一メートルほどのドブというか排水溝があり、普段はチョロチョロと水が流れる程度なのだが、大雨が続くと そこが小川のようにいっぱいにあふれ出すことがあって心配の種なのだという話をしていたので 最近の様子を聞くと 実はこの前 ふと見た軽鴨カルガモがいたのには驚いたよと言った。
水量はいかほどか聞くと チョロチョロ流れるぐらいだという。
軽鴨カルガモと言えばよく聞くのは 庭園の池とか お城のお堀とか そんなところに来るというイメージしかなかったのでそれにはちょっと驚いた。
もしかして軽鴨カルガモさん 勘違いしたんじゃないのかなあ。

 

薄紫を 風に浮かべて オキザリス

冷蔵庫に 米櫃仕舞い 半夏生ハンゲショウ

半夏生は旧暦の七十二候の一つ。
1年を春夏秋冬の4つに分けたものを「四季」、24に分けたものを「二十四節気」、72に分けたものを「七十二候」という。
七十二候は細やかな自然の移ろいに目を向けた暦で、鳥や花、気象などの様子で季節を表現しているのが特徴。
半夏生は、1年のうちで昼間の時間帯が最も長くなる、夏至から11日目の、7月2日頃から七夕までの5日間となっているが特に初日の七月二日を指していうのが一般的。
半夏生の「半夏とは 烏柄杓カラスビシャク」という薬草があり、サトイモ科の植物で、夏の半ばに花を咲かせることから、半夏と呼ばれるようになった。

 

焼きバナナの 屋台のラッパ 日照り星ヒデリボシ

メキシコでは 甘味のない種類のバナナを焼いてそれに甘味料をたっぶりと付けて 食べるのだという。
暗くなると 町のどこからか焼バナナを売る 屋台のラッパが聞こえてくる。
日本でいえばチャルメラのようなものか。でもラーメンというよりは焼き芋に近いのかもしれない。
日照り星は夏の星。夏には高原や海岸で星空を仰ぐ機会も多く星にも涼しさが感じられるが、日照りが続いている頃にはさそり座のアンタレスや 牛飼い座のアルクツウルスが赤々と見えることがある。

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