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2021-04-03

今月の俳句「三月」2021

昭和の住宅の絵

受験生 咲くがごとく 顔 ほころびぬ

卒業歌 だれの胸にも 配信す

今年の卒業式は卒業歌を歌えない 式を送った学校が多かったようだ。
そんな学生たちのために 東京音楽大学の学生たちが 有名な卒業の歌の数々をライブ配信でプレゼントしていた。

 

 

故郷(ふるさと)の海に似ており 復活祭

首都圏在住のある方が数年前に御宿町に移住してきた。
この町に決めた理由の一つは この町の海が幼年期に育った北海道の与市の海によく似ていたからだという。
復活祭はキリスト教において イエスの死と再生に思いを寄せるための行事であるが ここでは宗教的な意味から離れて 以前の暮らしを手放して あらたな土地で新たな生活を始めた人たちに 復活祭の 死と再生のテーマを重ねてみた。
なお 復活祭は 春分の後の最初の満月の日曜日にに行われる。

 

 

青き星の胸掻き均す 春の波

シオマネキ たまりの縁の 床屋かな

潮まねきは 砂蟹科の蟹。九州の有明海沿岸などでよく見られる。
雄の左右いずれかの はさみ足が著しく大きいのが特徴。内湾の砂泥域に穴を掘って住み、潮が退いた後の砂浜で大きなはさみ足を高く動かす。その姿が潮をまねくようなのでこの名がある。
角川学芸出帆編 合本俳句歳時記より
その大きな はさみ足がわたしに蟹の床屋の話を連想させる。

 

 

春風や髪型は阿部寛でと 言ふお客

知人の理髪店での話。
以前何も言わずにやってもらったら思ったより短髪にされてしまったというので、今回はこちらから注文をだしてみようとネットでいくつか検索。その中から俳優の阿部寛の髪型がよさそうだというのでタブレットに絵を示したという。
ところが理髪店の主人は その画面をちらっと見ただけで早速に取り掛かったという。
もっと絵を見ながらやるのかと思ったらもうちらっと見ただけだったねと知人は言っていた。
そりゃそうでしょうそこはプロですものね。

 

 

水飲て 三月の夜の 一人かな

タフタフと 胃のあたりまで 夜の海

木の家にも 年輪ありや 弥生尽(やよいじん)

建具屋の 親子睦まじ お中日

戸は滑り 春一日(ひとひ)また 動き出す

玄関の戸が動かなくなってしまった。今日は春分の日。しかし出入りの建具屋さんに電話をするとその日のうちに来てくれた。
もう築四十年を過ぎるといろいろと ひずみが出てくる。
とくに木の家というのは使っているうちにいろいろときしんでくるものだ。
そのたびに少しずつてを入れて暮らしていくのが 木の家の暮らしというものなのかと半分あきらめているのたが。
来てくれた建具屋は四十近くの息子さんとその父親で「おとうさん、おとうさん。」と声を掛けながら作業をしていた。
雨風でひしゃいでしまった板戸のベニヤ板も新しく貼りなおしてようやく完成。
スムーズに 戸が滑り出すと気持ちよく一日も送れそうだ。

 

 

寝間庇(ひさし) 足 散りばめぬ 春の鳥

庇(ひさし)とは 窓などの上に突き出た 短い屋根のようなもの。
最近の新しい家には庇(ひさし)のない家が少なくない。
それは箱型ののっぺりとした家だ。なぜ庇(ひさし)がないのかわからない。
ある方がいろいろと便利なように思われるのだが、
第一 ふとんなど干しても 庇(ひさし)がないと鳥の糞で汚されてしまうという。
直射日光や雨もそれなりに緩和できるだろう。
それは日本の家の利点のように思われるのだが、ゆえにわれは 庇(ひさし)を愛するものである。
朝 寝室の庇(ひさし)に鳥が歩いている音が聞こえる。
庭で珍しいさえずりが聞こえていたから
渡り鳥の仲間かもしれない。
四つ足の動物とは異なる細かな足音が庇(ひさし)の上を散らばっていく。

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