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2020-08-03

「50歳から歌作り 初のCD」(2020年5月27日 朝日新聞千葉版掲載記事)

50歳から歌作り 初のCD
全盲のシンガーシングライター わららべさん 

御宿町浜の全盲のシンガー・ソングライターわららべ尚道さん(本名・渡辺尚道)が初のCDを出した。50歳になったころから歌を作り始め、これまでに約50曲を作詞作曲した。このうち14曲を、ギタリストらの協力でアルバムにした。

CDの名は「なぎさのシエスタ」。表題曲は「サワサワ シュロの葉の子守歌 潮風 吹きぬける 雲の峰 白いパラソル ー人  寝そべれば 浜のざわめきが 早 遠ざかります」と、御宿の海辺の情景を描いている。曲調は70年代のフォークソング。「わかりやすい曲を選んだ。一緒に口ずさんでもらえたらうれしい」と話している。
勝浦市生まれで木更津市、茂原市育ち。幼いころに飲んだ薬の害で、小学4年生の頃から視力が低下、高校生になったときには試験問題の文字が読みにくくなるほどに悪化した。白杖を持つようになったのが18歳の時。高校卒業後に県立千葉盲学校専攻科に進み、鍼灸を学んだ。
専攻科時代は寮に入ったが、寮母さんから白いフォークギターをもらった。さらにフォークソングが大好きな先生がいて、ギターのコードの押さえ方を、それこそ手取り足取り教えてもらった。その後、和光大学に進み、卒業後に、御宿町で鍼灸の治療院を開設した。
再びギターを弾くようになったのが、48歳の時。御宿町に住む音楽家の齋藤芳子さんの開く音楽サークルに参加してからだ。合唱や合奏を楽しむ会だが、休み時間に弾き語りで、さだまさしの曲を歌ったところ好評で、弾き語りをするのが定例化した。
2年ぐらいして、頭に独自のメロディーが浮かぶようになった。披露したところ、「齋藤先生におだてられて」作詞作曲を続けるようになった。
曲の9割はメロディーが先。ふと頭に浮かんだメロディーをその場で録音しておいて、何曲かためてから歌詞をつけていく。いったんできあがっても、メロディーも詩も、あとで直すことも少なくない。
できあがった曲は、町内で機会があるたびに歌ってきた。CD化するきっかけは、町内に住むギタリストの倉橋潤さんと知り合ったこと。倉橋さんに編曲とギターなどの演奏を依頼し、1ヶ月に1曲のペースで録音をしていった。芸名のわららべは、本名から。「ホワンとした、とぼけたような名前にしたかった」
「なぎさのシエスタ」は3300円。アマゾンなどで購入できる。(稲田博一)

※(2020年5月27日 朝日新聞千葉版掲載記事)

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